第9回「街並みの美学」トラベルスカラシップ 結果発表


第9回「街並みの美学」トラベルスカラシップは、15大学大学院から24名の応募がありました。
8月5日、東京大学芦原研究室のOB4名とスカラシップ受賞者他、 計10名の審査員により審査がなされ、 第9回「街並みの美学」トラベルスカラシップ受賞者に、 下記2名の方が選考されました。




【第9回「街並みの美学」トラベルスカラシップ 受賞者】 (受付番号順、敬称略)

■ No.009 糟谷麻紘(京都工芸繊維大学) 「空隙の編―あたたかい場所をもういちど―」
      研究旅行テーマ:港町における景観と人々の暮らしの関係
      訪問予定の都市:中国/蘇州「東洋のベネチア」 タイ/バンコク「水上マーケット」


■ No.014 中村衣里(東京工業大学) 「Love of the city -道頓堀サーヴェイによる環境再編-」
      研究旅行テーマ:アジアの水都のデザインサーヴェイ/生活と自然との関係
      訪問予定の都市:クロアチア共和国イストラ半島にある港町(プーラ、ロヴィニ、ポレッチ)



【総評 : 大野秀敏(審査委員長)】
建築設計をするときに街並を考えようという機運は、1960年代からモダニズム批判と平行して起こった。
芦原義信先生は、まさに、この流れの源流を作った立役者である。
ところが、日本は、大文明の周縁にある地域の常として、様々な文化が流れ込み、どれも絶対的な地位を得ること無く、異質な物が常に併存してきた。だから、日本では、街並のコンテクストを特定するのが極めて難しい。つまり、いざ現実の問題として街並を考えようとすると、日本の都市風景はそう簡単な相手ではないことが判明する。では、日本で心地よく創造的な街を求めるとしたらどうすれば良いのだろうか。唯一の回答は、このスカラシップへの応募者の様に、飽きること無く挑戦し続け蓄積を重ねることしかないだろうと私は思う。だから、応募された方々が、今後もこの気概を忘れること無く、何度も何度も挑戦してほしいと期待している。

【No.009 講評 : 小林正美(東京大学芦原研究室OB・明治大学教授)】
糟谷さんの作品は、極めてオーソドックスな都市への丁寧な介入(インターベンション)の方法を示している。計画地として鞆の浦を選択したところで、その特異な地形や路地に救われてている部分がないとは言えないが、我が国の路地空間がもつヒダのような空間をスケールを間違わずによく再現している。単体としての建物ではなく連続体としてデザインし、周辺への波及効果を狙っている態度は本賞に相応しい作品といえよう。

【No.014 講評 : 大野秀敏(審査委員長・東京大学教授)】
中村衣里さん:このスカラシップのテーマである街並というと、多くの場合は、連棟の建築あるいは建築群をテーマにしがちだが、この作品は道頓堀を挟む二つの敷地を選び、そこに巧みにボイドを配し互いに響き合う関係を作り出している。小さな介入であるが、この界隈全体に強い影響を与え独特な空気を充満させることを期待させる。極めて優れた作品である。

応募作品(001-024)
001-010   011-020   021-024