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ごあいさつ
夫、芦原義信が亡くなって1年が過ぎた2004年9月24日、この芦原義信デジタルアーカイブスを開設いたしました。芦原は戦後、復員して東京の焼野原に立ち、一人の建築家として都市の再建を夢みました。以来60年近く、死の直前までひたすら働きつづけた85歳の生涯でした。手掛けた作品はソニービル、駒沢オリンピック体育館など、300余りに及びます。また、建築理論の追求にも熱心で、設計のかたわら若い頃のアメリカ留学で興味を持った空間構成、空間秩序の問題に取り組み、博士論文として「外部空間の構成―建築から都市へ」を書き上げました。その理論を実際の設計に生かす一方、都市景観についても「街並みの美学」などの著作や、新聞、雑誌、放送、講演などを通じて多くの人々に語りかけました。雑然とした日本の都市を少しでも美しくしたいという使命感に駆られてのことでしたが、晩年はその成果に手応えを感じて喜んでいました。
ここにはそんな芦原義信の軌跡が展示されています。折々に来館していただき、なんらかのメッセージを汲み取っていただければ幸いです。また、芦原はつねづね次の世代を担う若い建築家の励みとなるような手助けをしたいと言っていました。芦原家、芦原建築設計研究所としては、この場を通じてその遺志を実現させることを考えています。一建築家のアーカイブスにとどまらず、次の世代への掛け橋として機能することができれば大変うれしく思います。
2004年9月24日 芦原義信デジタルアーカイブス 芦原初子
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