■ 茨城県民文化センター
■ 茨城県民文化センター
小玉祐一郎『BCS建築賞 受賞ガイドブック(1993) 茨城県民文化センター』より
  水戸市の南側に広がる千波湖の周辺には県民センターや美術館、運動公園などがあって、市民のレクリエーションの場として親しまれている。
  県民文化センターは、千波湖をはさんで市街地の対岸にあり、市街地と向き合うロケーションにある。湖を望むように北側に開かれたエントランス広場を囲んで、西側に大ホール、東側に小ホールと展示場、南側に低層のレストランが配置された機能的で明快なプランである。
  打放しコンクリート仕上げの骨太の躯体を壁面の外側に突出させ、構造を強調した力強い表現である。外壁面はリブ状の打放しとして独特のテクスチャーを与えている。リブ状コンクリート打放しの施工の完成度の高さは、その表現とあいまって完成時に多くの注目を集めた。放しコンクリート面は、壁面保護のため1984年塗装が施されている。
■ 外部空間の構成に関する3つの仮説
芦原義信『新建築(1966) 外部空間の構成 茨城県民文化センターの意図するもの』より
  われわれがこの10年間に設計してきたものには、大体において、ふたつの系列がある。ひとつは、階高の差を利用したり、階をずらしたりして、内部空間に連続性や流動性をあたえようとする「内部空間の構成」であり、いまひとつは、敷地全体を建築と考え、屋根のない空間--いいかえれば外部空間にも、床面にレベルの差をつけたり、床面や外壁面のテクスチャーの質や寸法をも十分に考慮にいれて、意図のある「外部空間の構成」をつくりだそうという系列である。<・・・>
  それまでの経験によって「外部空間の構成」に関する3つの仮説を考えだした。
    Exterior Designの第1仮説・・
        外部空間においては、内部空間の約9倍(8-9倍)のスケールを用いること。
    Exterior Designの第2仮説・・
        外部空間においては、約24m-25mを1歩度とするスケールを用いること。
    Exterior Designの第3仮説・・
        外部空間においては、1歩度(24m〜25m)について
        材質が少なくも5〜6cmの襞のある単位のものを用いること。
  このようにして、建物によってとりかこまれた質のよい外部空間をつくりだす研究をしていた。
■ 食堂壁面の焼物造形
陶芸家:合田雄亮『ジャパン・インテリア(1966)』より
  茨城県民文化センターの私の受け持ちは、右手に大ホール棟、左手に小ホール棟と二つの大きなコンクリートの塊をつなぐような、美しいシエル構造の食堂棟の壁面であった。ということは、別に造形作品を要求している壁ではなく、むしろ構造的に建築の一部分といった性格で、三ヶ所の出入口、大きなサービスカウンター開口部、その上六個の空気穴とにぎやかな31mの大壁面でもあった。
  デザインの決定に当っては、設計者側の意向、又県側の特別の要望を考慮し、県下唯一の窯業地である笠間焼タイルを使用した。タイルは形とテクスチュアのユニットを作り、その組み合わせによって、88m2の壁面全体をデザインする方針をとった。型は山・波・平型の三種類、それぞれにテクスチュアを付けた。大きさはA・B・Cに分けAは283ミリ角、BとCを合わせるとAになるモデュールにした。笠間焼の技術的限界はあったが、多くのトラブルを覚悟の上、成型技術の面で釉薬・焼成等はできるだけ笠間焼の習慣にさからわず、むしろそこから自然に民窯の味を引き出すように心掛けた。